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   日本棋院と市ヶ谷台訪問の記

              M F 烏 鷺 会
                会長 角 田   守
                     (昭33政経)

 新緑が目に眩ばゆい五月晴れの好天気であった。平成19年5月29日火曜日、我々MF烏鷺会の有志9名は怒田良治先生(昭29工)のご案内により市ヶ谷に在る日本棋院東京本院を見学のため訪問した。囲碁に関心を持つ者なら一度ぐらいは見学しておくのもよいであろうという怒田先生のご配慮によるものである

   
   日本棋院東京本院 正面玄関前にて 左から4人目怒田良治先生  
   
   幽玄の間にて 数々の名局が生れた部屋  
  参加者は怒田先生を初めとして鈴木茂雄氏(昭24法)、菅沼良策氏(昭30商)、高橋正二氏(昭31経営)、下澤壮次氏(昭34農)、高田潤一郎氏(昭36政経)、寺岡明人氏(昭37政経)、金子勇二氏(昭37法)と斯く謂う小生の9名である。
  折りしも日本棋院では、第28回世界アマチュア囲碁選手権大会が開催され、第2日目を迎えたところであった。大きなイベントを抱えて、湧き立つような雰囲気の日本棋院であった。
  受付に申出ると、既に怒田先生のお手配があり、若い職員の方が出て来て、会館の中を親切に案内してくださった。職員のように見えたが、若しかしたらプロ棋士を目指す修行中の若者であったかも知れない。
  大手合いの行われる対局室や開放されているサロン、歴史資料館などを見学する。流石に囲碁の殿堂に相応しい立派な会館であった。
  一般対局室では世界アマチュア選手権大会が進行中であった。対局者は盤の傍らに国旗を立てて碁を打つ。各国の代表は唯一人だけ、それぞれ祖国と自分自身の名誉を賭けて対戦している。第28回目の本年は68の国と地域の代表を迎え、史上最多の参加者だそうである。
  大会進行のルールは「世界アマチュア囲碁選手権戦ルール」が決められており、8回戦を行い、その成績により選手権者が選ばれるとのことである。
 
 世界アマチュア囲碁選手権大会会場
  怒田先生のご用意戴いた資料によると、日本代表は森洋喜氏32歳、愛知県出身、選抜大会優勝者である。その他に中国代表の単子騰氏13歳、北京出身学生、韓国代表のドンハウー氏20歳が優勝候補とのことであったが、大会終了後の結果は、予想通り優勝は中国代表13歳の単子騰氏、準優勝は韓国代表のドンハウー氏、日本の森洋喜氏は3位であった。
  過去の優勝回数は中国15回、日本8回、韓国3回、香港1回である。中国で生まれ、日本で発展した囲碁であるが、現在では中国、韓国が強いようである。
  緊張感溢れる対局の様子と大会会場の風景を見学して日本棋院を後にした。
  本日の主な目的は日本棋院の見学であるが、折角市ヶ谷まで来たのだからと、防衛省の中に在る市ヶ谷記念館を見学することにする。これは神奈川県防衛協会の役員を務めている金子勇二氏のお手配によるものである。
  本年1月9日に庁から省昇格なった防衛省は中央官庁の中では最も大きな庁舎とのことにて、陸海空自衛隊の中枢部門が総て此処に集中している。
  18階の展望レストランで昼食を摂り、午後の市ヶ谷台ツアーに参加した。これは防衛省広報課が実施している約2時間の市ヶ谷記念館を中心にした防衛省庁舎見学会である。
  市ヶ谷記念館とは、元陸軍士官学校の講堂で、新庁舎建設時に取り壊わされることになったが、当時全国から存続の嘆願が起こり、歴史的建造物として現在場所に移築復元されたものである。大東亜戦争の時は大本営陸軍部、陸軍省が置かれ陸軍大臣室も残っている。後に陸上自衛隊の東部方面総監の部屋となり、三島由紀夫が割腹したことでも有名である。講堂は極東国際軍事裁判の法廷として使用されたところである。ガイドの方から丁寧な説明を受ける。
  庁舎内の見学ツアーが終わって、3時半、予めアポイントメントを取つておいた海上自衛隊の吉川榮治海幕長を表敬訪問する。海上幕僚副長の加藤保海将、海上幕僚監部総務部長の泉三省海将補も同席された。
   
   海幕長吉川榮治海将を囲んで 後列左端海幕副長加藤保海将 右端泉三省海将補  
 
 金子勇二氏がこんな質問をした。
 『昨年の12月、元海上幕僚長の山本安正様が藤沢でご講演をなさいましたが、北朝鮮の工作船事件の話が出て、あの時自分は海幕長だったが優秀なスタッフに恵まれて幸いでした。何しろ、防衛部長が現在の斉藤隆統幕長であり、追跡した第3護衛隊群司令が今の吉川榮治海幕長なのですからと笑っていられました。吉川様は歴史上初めてと言う海上警備行動の発令を受けた現場の責任者であった訳で、その時のお気持は如何でしたか』
 『あれは、私にとっては敗軍ノ将兵ヲ語ラズで、余り人に話した事はないのです。実は、あの時私の受けた命令は「停船サセ捕捉セヨ」と言うものでした。結果としは逃げられてしまったのですから、私は命令を完全に遂行できなかったのです』
 予想もしない意外な言葉に我々は少々驚いた。
 『吉川様はその時、どちらにいらしたのですか』
 『護衛艦「はるな」に乗っていました。停船させるために砲撃をしましたが、これが、絶対に当てちゃアいけないと言う命令です。照準は工作船に合わせるのですが、それから砲身をずらして撃つのです。ところが弾着が段々と近ずいていくのですね。外して撃つのは難しいものです』
 吉川海幕長は爽やかに笑いながら語られた。白皙豊頬の美丈夫で、武人とも思われぬ謙虚な話しぶりにお人柄の床しさが偲ばれた。お話しを伺つていても信頼感が寄せられる。国家防衛の最高責任者に、このような立派な方のいることを頼もしく思ったものである。
 短い時間であったが、丁重に謝辞を述べて辞去した。
防衛省から歩いて靖国神社に行く。参拝の後、新装なった遊就館を見学した。日本の国の為に身を捧げた人々の事蹟は何度観ても胸を打つ。現在の恵まれた生活を享受している我々は、この平和な社会を築かれた先人の尊い努力や犠牲を片時も忘れてはならぬと思う。
 今日は囲碁の会の行事であったが、色々と意義のある一日であったことを思い返しながら、暮れなずむ靖国神社の境内を後にし、帰路に着いた。
   
   靖国神社に参拝して  

  
  

 

 
 
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